2021 年 77 巻 5 号 p. I_209-I_220
宇都宮市大谷石採取場跡地の地下空間内に存在する低温の水は,冷熱エネルギー源としての利用が期待されている.地球温暖化抑制に寄与する冷熱利用事業の健全化を目的として,現地モニタリングや模型実験を実施し,地下空間貯留水の実態把握と低温化メカニズムの考察を行った.貯留水の一斉観測結果より,半水没状態の地下空間で低温(10℃未満)の水の存在が確認されたが,83%の地下空間が満水状態であることがわかった.貯留水の低温化は,半水没状態の地下空間において冬期に冷却された外気が地下空間に流入して冷却源となる顕熱プロセスと,貯留水の蒸発によって水温低下が生じる潜熱プロセスより複合的に生じるものと考えられる.室内模型実験で潜熱プロセスを検証したところ,地下空間に流入する空気の湿度と貯留水温に正の相関が認められ(R = 0.69~0.75),流入空気の湿度が低いほど,貯留水の温度低下量が増大することが明らかとなった.