2021 年 77 巻 5 号 p. I_197-I_207
CO2排出削減策として,水素・アンモニア等の水素エネルギーキャリアの有効性が指摘されている.しかし,電化やバイオマスとの競合など,エネルギーシステム全体を包括的に考慮した上でその有効性を評価した研究は少ない.本研究は世界全域を対象に,水素関連技術を明示的に考慮したエネルギーシステムモデルを開発し,その役割を明らかにすることを目的とする.結果,CO2排出をほぼゼロとする大幅削減,および炭素回収貯留(CCS)が制限された場合において,水素エネルギーキャリアは2050年の最終エネルギー消費の約1割まで拡大し,特に運輸・産業部門の残存排出量削減策としての有効性が示された.特定の条件下では水素エネルギーキャリアは重要性を増すといえるが,気候変動緩和策としては,電化・バイオマス等を含めた総合的な方策の重要性が示唆された.