2021 年 77 巻 5 号 p. I_221-I_229
本稿は,2020年12月に茨城県14市町4,275件の認定農業者を対象に実施したアンケート調査から,農業分野における気候変動影響と適応策の現状と課題を議論した.その際には,空間情報解析と統計解析を組み合わせて考察した.
調査の結果,9割以上の農家が収量低下,生育不良,病虫害などの天候被害の経験を有しており,その要因に高温,多雨等を挙げていた.実践中の適応策には農薬・防除,栽培品種の変更,水やりの工夫等の順に回答が多く,将来的な適応策には栽培品種の変更,栽培時期の変更,水やりの工夫,作物転換も視野に入れた回答が見られた.既に多くの適応策を実践している様子も窺えた.さらに,こうした適応実践には被害経験,気候変動の実感,適応の認知等の複数要因が関与していることが明らかとなった.