2021 年 77 巻 5 号 p. I_9-I_15
瑞梅寺川流域では豊かな自然環境と貴重な生態系を有している.一方で,都市開発や水田の減少に伴い地下水涵養量の減少が懸念されている.このような水循環系に対する問題の解決策としてウォーターバンキング(以下WB)が注目されている.
本研究では同流域を対象とした水収支解析を行い,WBの効果を検証した.その結果,荒地と水田にWBを行った場合の差が明らかになった他,WBにより地下水涵養量が約7%増加,表面流出量が約15.5%減少,全余剰表流水を7%地下に貯留できることが確認された.また,地下水淡水位はWB直後に上昇し,地下水塩水位に関してはWBを長期間実施するほど地下水の塩水化が低減した.さらに,1差分格子あたりでは周辺の表面流出率が一様に低く,流出係数が大きい土地利用ほどWBによる地下水位改善が効果的であることが判明した.