2021 年 77 巻 5 号 p. I_93-I_103
河川構造物の設計等に利用される大規模洪水量は流出解析モデルに降雨波形を入力することにより算定される.本研究では大規模洪水量を算定するための降雨波形として,観測雨量に基づく降雨波形とd4PDFの過去実験に基づく降雨波形を提案した.観測雨量および過去実験に基づく降雨波形では,年最大雨量の再現期間に基づく降雨量の設定が可能である.ケーススタディーとして,庄川水系の2つの流域において再現期間1,000年の降雨波形を入力値とした流出解析を実施した.観測雨量および過去実験に基づく降雨波形を入力値として各々計算された洪水比流量を,下流部において観測された既往最大比流量と比較した結果,前者は既往最大比流量を超過した一方後者は超過しなかった.後者の結果は,過去実験の年最大雨量が対象流域において過小評価したことに起因した.