2021 年 77 巻 5 号 p. I_105-I_113
ヤマトシジミの成長量と水温の関係についての既往研究から,水域によって水温と成長量の関係に差が存在する可能性が示唆されていた.本研究では,過去の7年間で実施した十三湖におけるヤマトシジミの現場飼育実験の結果を用いて,十三湖におけるヤマトシジミの成長量と水温の関係について分析した.測定した水温に基づいて有効積算水温を算出し,有効積算水温とヤマトシジミの成長量との相関分析を行った.その結果,有効積算水温とヤマトシジミの成長量の相関係数は最大で約0.27となり,水温と成長量に弱い相関があることが分かった.また,十三湖においてヤマトシジミが成長を始める水温は13℃付近に存在すること,および高水温期である8月より前の期間の水温が夏季の全成長量への寄与が大きい可能性が示唆される結果が得られた.