2021 年 77 巻 6 号 p. II_59-II_66
粗石付き魚道を設計する上で,粗石周辺の流れと魚の遊泳特性との関係を把握する必要がある.しかし,粗石粒径が魚の遊泳特性に及ぼす影響はほとんど解明されていない.本研究では,開水路底面に設置された模擬粗石の粒径および流速を系統的に変化させ,オイカワの遊泳特性への影響の解明を試みた.その結果,流速の増加に伴い,粒径がオイカワの体長よりも小さな場合は,オイカワの遊泳位置が粗石の頂部以深から頂部以浅へと上昇する一方,粒径がオイカワの体長よりも大きな場合は,オイカワは粗石背後の低流速域を目指して水平方向に移動した後に休憩しながら遊泳するため,上流まで到達するオイカワの尾数が増加することが明らかとなった.したがって,河川に粗石付き魚道を設置する際には,対象魚の体長以上の粒径の粗石を底面に設置すると遡上率が向上すると推定される.