2021 年 77 巻 6 号 p. II_67-II_72
瀬戸内海を対象に,人口減少による窒素・リンの発生負荷量の将来変化を推計するとともに,今後の汚濁負荷の管理方針に関する検討を行った.瀬戸内海全体では,2020年に比べて2050年には集水域人口が約21%減少するが,生活系負荷が減少することで,発生負荷量は窒素で約7.0%,リンで約9.5%減少し,窒素に比べてリンが大きく減少する.発生負荷量の排出源別構成比や人口減少率の空間分布を反映して,負荷量減少率は湾灘ごとに2%~16%の範囲で大きく異なった.大阪湾と豊後水道を除く湾灘では,人口減少率と負荷量減少率との間に比較的強い相関が認められ,集水域人口が10%減少するにつれて窒素・リンの発生負荷量はそれぞれ4.4%,2.9%減少すると概算可能であった.今後,豊かな海の実現に向けて発生負荷量を制御する際には,人口減少による負荷減少量を見込む必要がある.