2021 年 77 巻 7 号 p. III_339-III_345
都市下水中の有機物と栄養塩(リン,窒素)は重要な資源である.都市下水から有機物を回収する方法の一つに下水直接膜ろ過(Direct Membrane Filtration, DMF)があり,流入下水中有機物の75-80%を安定して濃縮回収することができる.これまでに報告されているDMF検討例のほとんどで栄養塩の回収は行われず,処理水(膜透過水)に栄養塩が残存していた.本研究ではDMF前段においてリン吸着性能を付与した微生物担体を用いたリン吸着を,DMF後段においてイオン交換による膜透過水中アンモニアイオンの吸着を試みた.実下水を用いた実験で,リンに関しては75%,アンモニアイオンに関しては80%を回収できることが示された.アンモニアイオンの回収については,ナノろ過を導入して共存多価イオンの影響を排除することで,さらに回収率を高められることを確認できた.