2021 年 77 巻 7 号 p. III_83-III_91
家畜へ投与された抗菌剤の一部は排泄物中に排出される.そのため抗菌剤が畜産廃水と共に周辺の水環境に流出し,水域生態系に悪影響を及ぼす可能性がある.本研究では,イライトまたはゼオライトを主要粘土鉱物とする2種類の鉱物試料(Y-illite, M-Zeolite)との接触による溶液中及び養豚廃水中に添加した3種類の抗菌剤の除去処理試験を行った.さらに処理水の安全性について,藻類R.subcapitataを用いた短期毒性試験により検討した.その結果,M-Zeoliteの方がY-illiteよりも抗菌剤の除去速度が速いことが示された.また,タイロシンは吸着だけでなく分解も生じる可能性が示唆された.さらに,実際の養豚廃水を用いた除去試験より,人工湿地の後段 にゼオライトでの接触処理を取り入れることで,より効率的に抗菌剤が除去できることを明らかにした.