2021 年 77 巻 7 号 p. III_93-III_102
バイオフィルムは,微生物が様々なストレス環境下で棲息するために産生する細胞外高分子物質を主成分とし,給配水システムでは水質劣化や配管腐食などの問題を引き起こす.紫外線照射は浄水処理において消毒技術として利用されており,細菌にとって自己の生存を脅かすストレス要因に他ならない.本研究では,細菌への紫外線照射がバイオフィルムの形成に及ぼす影響を評価した.実験は,紫外線を照射した緑膿菌液と非照射の緑膿菌液を異なる比率(照射菌液の体積比率として100, 50, 10, 1, 0%)で混合し,マイクロタイタープレートで培養してバイオフィルムを成長させて行った.バイオフィルム形成量をクリスタルバイオレット染色法で定量すると共に,培養液中の菌の代謝活性をATP法で測定した.照射菌液100%の試料中のATPは6時間以内に97%減となり,バイオフィルムはその後に成長が見られた.また,照射菌液100%の試料は,0%試料に比較してバイオフィルムの成長速度が2倍以上と推定された.これらの結果から,照射菌液中に生残した細菌のバイオフィルムの産生を,紫外線照射で不活化された細菌が促進している可能性が示唆された.