2022 年 78 巻 1 号 p. 13-20
都市下水処理水の培養で増殖した微細藻類を給餌することで,養殖魚の種苗生産に用いられる動物プランクトン(アルテミア)の成長と生存を調べた.標準活性汚泥法と塩素消毒で処理された下水処理水を培養したところ,微細藻類の増殖が確認され,その95%以上が緑藻網(すべてクロロコックム目)であった.培養後の微細藻類を乾燥し粉砕した後,餌料としてアルテミアに与えて10日間の飼育実験を行った.比較対照として市販餌を与えた条件や餌を与えない条件でも同様の実験を行った.その結果,微細藻類を与えた条件での10日後のアルテミアの体長は,他の条件よりも平均で16%大きかった.さらに,微細藻類を与えた条件でのアルテミアの回収量は市販餌を与えた条件よりも明らかに多く,下水処理水由来の微細藻類はアルテミアの餌料として有用であった.