2022 年 78 巻 5 号 p. I_337-I_348
本研究の目的は,気候変動および社会経済の変動による砂浜の経済的影響を評価するために,将来の砂浜侵食および人口変動による都道府県別の砂浜レクリエーション価値の損失額を計測すること,および砂浜回復を目的とした仮想的な適応策の費用便益分析を行うことである.本研究の結果から得られた主な知見は,1) 気候変動に加えて人口の変化を考慮した場合の砂浜被害額は,SSP1-2.6で2,577億円/年,SSP2-4.5で2,900億円/年,SSP5-8.5で2,678億円/年と推定されたこと,2) RCPおよびSSPの全ての組み合わせにおいて,31から35都府県の適応策が経済効率的であるのに対して,北海道,青森県,徳島県,高知県,宮崎県,鹿児島県の6道県は適応策が経済的に非効率であることである.