土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
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地球環境研究論文集 第30巻
人口・土地利用シナリオに基づく日本沿岸域の海面上昇の社会経済影響評価
児玉 康希横木 裕宗田村 誠
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2022 年 78 巻 5 号 p. I_349-I_357

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抄録

 本研究は,日本沿岸域を対象として,海面上昇と潮汐による各都道府県の潜在的浸水面積,影響人口,浸水被害額といった浸水影響を評価した.浸水被害額は,従来のマクロ計量経済的な被害額推計手法を見直し,国土交通省の治水経済調査マニュアル(案)に基づき推計した.さらに,高位と低位の温室効果ガス排出経路(SSP5-8.5とSSP1-2.6)を比較し,社会経済シナリオの不確実性評価を行った.全国の潜在的浸水面積は,2050年に約2,111-2,127km2,2100年に約2,261-2,598km2になると推計された.影響人口は2050年には約445-470万人,2100年には約376-492万人となり,浸水被害額は2050年に約143-170兆円,2100年に229-430兆円と推計された.SSP1-2.6は潜在的浸水面積,影響人口,被害額のいずれもSSP5-8.5よりも小さくなり,緩和策の重要性が示唆された.また,従来の推計手法と比べてSSP5-8.5で20倍以上の被害額となり,建物用地や影響人口が集積する三大湾の被害がより顕著となった.

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© 2022 公益社団法人 土木学会
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