2022 年 78 巻 5 号 p. I_349-I_357
本研究は,日本沿岸域を対象として,海面上昇と潮汐による各都道府県の潜在的浸水面積,影響人口,浸水被害額といった浸水影響を評価した.浸水被害額は,従来のマクロ計量経済的な被害額推計手法を見直し,国土交通省の治水経済調査マニュアル(案)に基づき推計した.さらに,高位と低位の温室効果ガス排出経路(SSP5-8.5とSSP1-2.6)を比較し,社会経済シナリオの不確実性評価を行った.全国の潜在的浸水面積は,2050年に約2,111-2,127km2,2100年に約2,261-2,598km2になると推計された.影響人口は2050年には約445-470万人,2100年には約376-492万人となり,浸水被害額は2050年に約143-170兆円,2100年に229-430兆円と推計された.SSP1-2.6は潜在的浸水面積,影響人口,被害額のいずれもSSP5-8.5よりも小さくなり,緩和策の重要性が示唆された.また,従来の推計手法と比べてSSP5-8.5で20倍以上の被害額となり,建物用地や影響人口が集積する三大湾の被害がより顕著となった.