2022 年 78 巻 5 号 p. I_359-I_370
気候変動に伴う海面上昇に対する適応策の1つである住宅移転の費用推計方法を提案し試算を行った.防災移転に関する既存の制度である「防災集団移転促進事業」のスキームに従い,土木工事費用などの豊富な実証データを活用することで,信頼性および妥当性の高い費用推計方法を構築した.気候シナリオと社会経済シナリオの組み合わせとしてSSP1-2.6(SSP1-RCP2.6)およびSSP5-8.5(SSP5-RCP8.5)を用いて,それらにおける浸水影響人口を移転させるために必要な費用を推計した.その結果,SSP1-2.6における移転費用の全国総額は2050年に約92-183兆円,2100年に約121-274兆円になると推計された.同様に,SSP5-8.5における全国総額は2050年に約105-215兆円,2100年に約210-501兆円になると推計された.費用に占める都道府県の割合は東京都が大半を占めた.既往研究の防護費用と比較すると,本研究の移転費用の方が高かった.