2022 年 78 巻 5 号 p. I_397-I_403
伊能図は,江戸時代後期,伊能忠敬によって行われた第1次から第10次測量(1800-1816)までの成果をもとに我が国初の近代測量技術によって作製された地図である.特に,国土の全容を捉えようとする意図から,沿岸部や全国の主要街道を中心とした地理情報が充実している.本研究では,空間情報解析によって,伊能図に見られる地理情報と現在のハザード情報とを結びつけることにより,現存する水害地名の浸水リスクの顕示性や,消失した水害地名によるリスクの見逃し率等について検討した.その結果,市街地化による地名消失が浸水被災リスクの顕示率を下げている可能性や現在のハザードマップや地名からは想起できない洪水リスクを示唆しうる水害地名も少なからず存在していることなどが明らかとなった.