2022 年 78 巻 5 号 p. I_417-I_427
温室効果ガス排出削減への関心の高まりと技術進歩に伴い,大気中から二酸化炭素を直接回収する技術(DAC)が注目を集めている.本研究は応用一般均衡モデルにおいてDACをモデル化し,エネルギーシステムや経済への影響を推計した.結果として,世界の気温上昇を1.5度未満に抑える排出削減シナリオにおいて,2050年でのDACによる二酸化炭素回収量は4.9Gt-CO2と推計された.そして,DACの導入はバイオマスの需要を低減させ,食料価格の高騰を抑制する効果を示した.また,DACの導入は排出削減に伴うGDP損失を2050年において21.7%抑制し,等価変分によって計算される損失を4.6%抑制した.本研究の結果からDACはマクロ経済影響を抑制する効果を持つ削減技術として,その選択肢を検討しうると考えられる.