2022 年 78 巻 7 号 p. III_185-III_194
塩素消毒によって天然有機物(NOM)から消毒副生成物(DBP)が生じうる.本研究では,超高分解能質量分析を用いて重水素標識Xn-DBP(Xnはハロゲンで塩素,臭素,ヨウ素のいずれかを示す)の分子式を同定することで,DBPの前駆体NOMならびに反応経路を明らかにすることを目的とした.その結果,Xn-DBPの多くが共通の分子式から生じていた.DBP生成における親電子付加反応および置換反応の相対的寄与は,反応に関与するハロゲン種に依存し,次亜ハロゲン酸種の酸性度が反応経路に影響を及ぼす可能性が示された.さらに,NOMの分子特性からDBP生成の有無を予測する二値分類機械学習モデル(ランダムフォレスト)を構築した結果,モデルは高い予測精度を示し,I-DBPの生成においては前駆体NOMの炭素酸化状態等が重要な因子であることが示唆された.