土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
最新号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
環境工学研究論文集 第59巻
  • 瀧野 博之, 三浦 尚之, 浅田 安廣, 秋葉 道宏
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_1-III_10
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,クローズドシステムの高度浄水・排水処理プロセスの各工程から試料を採水し,トウガラシ微斑ウイルス(PMMoV),ロタウイルス A(RVA),ノロウイルス GII の挙動を調査した.原水中にそれぞれ6.1,3.7 log10 copies/Lの濃度で含まれたPMMoVとRVAは,凝集沈澱処理により濃度が低下した(3.9 log10 copies/L,不検出).PMMoVは,さらにオゾンおよび活性炭処理後に濃度がそれぞれ 3.4,3.2 log10 copies/Lに低下し,ろ過処理水ではほとんど不検出となった.排水処理系統では,PMMoVは汚泥の濃縮槽上澄水や脱離水からそれぞれ4.2,4.3 log10 copies/Lの濃度で検出された.浄水および排水処理水量に基づき,着水井に返送されるPMMoV負荷量を計算した結果,原水に対する影響は0.06%にとどまることが明らかになった.凝集沈澱処理によって除去されたPMMoVの大部分は,脱水ケーキと共に系外へ排出されると考えられた.

  • 石井 敦大, 大石 若菜, 門屋 俊祐, 佐野 大輔
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_11-III_21
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     下水処理水の塩素消毒条件は,CT値等の消毒条件と対数除去率(Log Reduction Value: LRV)の関係を表すウイルス除去モデルに基づき設定することが望ましい.しかしながら,pHや懸濁物質濃度などの水質の変動が下水処理水中のウイルス除去率に与える影響を考慮した予測不活化モデルは構築されていないのが現状である.そこで本研究では,正則化回帰分析を用いて,下水二次処理水の水質データ,消毒条件及びウイルス定量法の種類を説明変数としてLRVを予測するモデルの構築を試みた.系統的文献検索によりLRV及びLRVが得られた水質及び消毒条件を収集し,種々の正則化回帰手法を用いてモデリングを行った.その結果,最も高い予測精度が得られたモデルは,説明変数として線形項及び相互作用項(各説明変数同士の積)を採用し,アルゴリズムとしてはAutomatic Relevance Determination(ARD)を適用したものとなった.試験ウイルスとしてエンテロウイルス71,実験用溶液として下水二次処理水を用いてモデルの適用可能性の検証実験を行ったところ,説明変数として線形項及び相互作用項を採用し,アルゴリズムとしてBayesian Ridgeを適用して構築したモデルでは,過学習を回避しつつ,高い予測精度を得られる結果となった.しかしながら,2 LRVよりも小さい範囲では予測値が観測値を上回る結果が多く確認された.この結果は,実験室株の塩素消毒への感受性が低いことや,使用した説明変数以外の要因がエンテロウイルスの塩素消毒効率に影響を与えていることが原因であると考えられた.水中ウイルスの消毒に関する既往の報告では,予測精度の良いモデルを構築するために必要な下水二次処理水質や対象ウイルスの消毒剤感受性に関する詳細なデータが欠けていたことから,今後はウイルス株間の感受性の多様性やウイルス消毒効率を低減する下水中の因子候補に関するデータを蓄積していくことが望ましい.

  • 米田 一路, 齋藤 美樹, 西山 正晃, 植木 洋, 坂上 亜希恵, 渡部 徹
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_23-III_32
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     牡蠣を人為的にノロウイルスGII.2とGII.4に汚染する実験を行い,牡蠣に蓄積されたノロウイルス量の分析を行った.ノロウイルスGII.2(陽性率:80.0%)はGII.4(陽性率:60.0%)よりも牡蠣に蓄積されやすい傾向があった.遺伝子型に関わらず,高濃度のノロウイルスGIIを添加した人工海水で24時間飼育しても,ノロウイルスGIIを蓄積しない牡蠣が存在し,ウイルス蓄積量の多い牡蠣(中腸腺1g当たり約4.08log copies)と少ない牡蠣では100倍以上の個体差があったが,牡蠣のノロウイルスGII蓄積量は,個体重量や中腸腺重量とは相関がなかった.今回の実験で確認されたようなウイルス蓄積量の少ない牡蠣を選別して養殖できれば,より安全性の高い牡蠣の提供につながるだろう.

  • 鹿沼 俊介, 藤野 創太, 羽深 昭, 木村 克輝
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_33-III_41
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     嫌気性MBRにおけるSRTの延長とHRTの短縮が下水汚泥消化効率に与える影響を明らかにするため,SRTを3条件(30,60,90日),HRTを2条件(30,15日)設定し,各運転条件における糖,タンパク質および脂質の分解率を求めた.それら有機物分解率はSRTが30日の条件に比べ,60日や90日と長い条件において上昇した.バイオガス生成速度はHRT短縮に伴う有機物負荷上昇により,HRTが30日の条件に比べ15日での運転において約2倍に増加した.膜間差圧は最大で41kPaに達したが,比較的内径の大きい中空糸膜を用いてクロスフローろ過を行ったことで154日間膜洗浄および交換を行わずに連続膜ろ過がなされた.運転終了後の膜洗浄の結果,不可逆的無機ファウリングが支配的であった.無機ファウラントとしてCa,PおよびMgが多く抽出された.

  • 藤井 大地, 乙幡 雄介, 齋藤 利晃, 小沼 晋
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_43-III_52
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,下水からの窒素資源回収を飛躍的に高効率化・省エネルギー化することを目的として,栄養塩欠乏下における微細藻類の細胞内有機物蓄積特性を応用した新しい高効率窒素回収手法の基礎理論を提案するとともに,その有効性を実験室規模での実験により検証した.リン欠乏環境への曝露及び pH制御により,Chlorella sp. MK201株の細胞増殖を人工的に抑制し,細胞内有機物の蓄積量を一時的に増大させることで,蓄積された有機物をエネルギー源とした増殖速度の向上が可能であることが確認された.細胞内有機物の蓄積とその利用からなる二段階の工程により微細藻類の高効率培養を実現する新しいアプローチの有効性が確認されたことは,今後の藻類利用の可能性を広げることに貢献するものと考えられる.

  • 木村 祐哉, N’Dah Joel KOFFI , 岡部 聡
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_53-III_60
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     微生物燃料電池(MFC)は下水処理と再生可能エネルギーの回収を同時に行えるが,出力電圧・電力の低さが課題である.そこで,著者らはMFC出力電圧を使用可能なレベルまで昇圧するため,DC/AC昇圧器(LVB)に整流・充電器を組み合わせた昇圧・充電器(LVBR)を設計・作製した.本論文では,LVBRとMFCの接続方法が下水からの電力エネルギー回収率に及ぼす影響を評価した. 実験はエアカソードMFCにLVBを搭載したMFC-LVBユニット3台を1台の整流・充電器(R)に並列接続する方法(MFC-LVBR I)と,3台のMFCを1台のLVBRに並列接続する方法(MFC-LVBR II)による下水からのエネルギー回収率を検討した.スーパーキャパシタ(16.2V,83.3F)を72時間充電し,MFC-LVBRIではキャパシタ充電電力量はNERCOD = 0.0275kWh/kgCODとなり,下水が保有する理論エネルギー量(3.86kWh/kg-COD)の0.71%を回収できた. MFC-LVBRIIでは3.10Vまで昇圧されエネルギー回収率は0.95%であった.

  • 加藤 伸孝, 花木 啓祐
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_61-III_72
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     下水道管きょのTVカメラ調査の効率化のために、機械学習による画像認識と物体検出の適用可能性の検討を実際の調査動画を用いて行った。画像認識は、MobileNetV3-Large、ResNet-50、EfficientNet-B4、EfficientNet-B4 Noisy Studentの4モデルについて、6クラス分類で転移学習の効果と汎化性能の比較はF値平均を用いて行った。学習データセットの転移学習なしは、ResNet-50が良く、転移学習ありは、EfficientNet-B4 Noisy Studentが良く、汎化性能は転移学習なし、転移学習あり共に、EfficientNet-B4が良いと言う結果であった。物体検出は、3クラス分類でmAPは90.76%となり、適用可能性が示された。

  • 大谷 恭平, 原 宏江, 山村 寛, 池本 良子, 本多 了
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_73-III_80
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     下水処理水には既知・未知の様々な化学物質が低濃度で残留していることから,水の循環利用における安全・安心を確保するためには,包括的な水質の評価・監視が必要である.本研究では,高度下水処理水と飲用水の水質を比較することを目的として,機械学習に基づく異常検知手法を3次元蛍光データに適用し,蛍光特性に基づき飲用水水質をモデル化するとともに,飲用水と高度下水処理水の総合的な水質の類似性を定量的に比較した.全国各地から387検体の飲用水サンプルを収集し,Deep SVDDを用いた3次元蛍光データの学習により,飲用水が共通して有する蛍光特性のモデルを構築した.異常度(当該モデルとの乖離の程度)の算出結果から,飲用水水質も採水地や採水時期によって多様性があることがわかった.また,RO透過水の水質は,飲用水水質のばらつきの範囲内には収まらないものの,希釈したMBR処理水に比べはるかに飲用水水質に類似することが示唆された.インラインLC-EEMを用いた詳細な蛍光分析において,高度下水処理水中の蛍光物質は比較的小さい分子量を有することが明らかとなった.EEMスペクトルデータの活用に際し,機械学習に基づく異常検知手法の適用が有用である可能性が初めて示された.

  • 田辺 洋輝, Mohamed ELSAMADONY , Dhimas DWINANDHA , 藤井 学
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_81-III_94
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     国連は2030年までに達成すべき目標として「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げている.しかしSDGsはその複雑さゆえに目標・ターゲット間に種々の相互関係(相乗関係やトレードオフ関係)が存在し,進捗改善に向けて的確にその相互関係を把握する必要がある.本研究では,目標6「安全な水とトイレを世界中に」に着目し,各目標が相互関係を通して目標6の指標進捗に与える影響について説明可能な機械学習を用いて調べた.具体的には,176の国を対象にSDGsに関わる80の指標を選定し,クラスター解析や説明可能な機械学習(LIME)によって分析した.ターゲット6.1/6.2関連指標(飲料水,衛生設備へのアクセス人口割合)と他のSDGs指標との相互関係性を調べた結果,電力普及率や貧困率,死亡率と相乗関係にあり,一方でエネルギー消費や廃棄物とトレードオフ関係にあることが示唆された.このように多様なSDGs目標間・ターゲット間の相互関係性を定量的に示し,これまでの定性的な見解を数理的に検証する手法の一つとして説明可能な機械学習を活用していくことが望まれる.

  • 渡邉 俊介, 大隈 一輝, 松濤 直樹, 藤林 恵, 井芹 寧, 郝 愛民, 久場 隆広
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_95-III_101
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     シアノバクテリアMicrocystis aeruginosaとアオコの発生に有利な環境で増殖できる珪藻Nitzschia paleaの競争関係に与える水温及びpHに着目して, M. aeruginosaに対する増殖抑制効果について検討した. 水温15–30℃において, M. aeruginosaの最大細胞収量はN. paleaとの競争によって単藻培養よりも約50%低下した. アオコが発生しやすいとされる高水温を想定した30℃においてもN. paleaM. aeruginosaに対して抑制効果を発揮した. M. aeruginosaはpH7.0, 8.0, 9.0においてN. paleaと競争培養することで最大細胞収量がそれぞれ27, 53, 70%減少した. すなわち, N. paleaはアオコが優占しやすいとされる弱アルカリ性においてM. aeruginosaの増殖能力を低下させた. しかし, 20–30℃及びpH7.0–9.0においてM. aeruginosaが優占したため, N. paleaによる増殖抑制効果を高めるためにはN. paleaの優占度を人為的に増加させる必要がある.

  • 栗原 有輝, 畠山 勇二, 丸尾 知佳子, 西村 修, 坂巻 隆史
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_103-III_113
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     二次生産者の生産性評価は,生物多様性保全や漁業生産管理の観点から重要である.本研究では,海域の二次生産性評価への応用を念頭に,主要な二次生産者であるカキについて,殻の化学分析に基づく成長過程評価の実現可能性を明らかにすることを目的とした.カキ殻のチョーク層中Mg/Ca比と水温の関係の解析から,水温が層のMg/Ca比に反映されるのに1か月程度を要する可能性とともに,2か月程度で1つのチョーク層が形成されていると示唆された.また,右殻殻頂付近の両表面内部のチョーク層と葉状層は成長過程を記録していると考えられる.その領域の面積は,殻の厚さ・殻高・殻切断面面積と正の関係を示し,カキ成長の定量的な指標となることが示された.これらの殻形態指標間の関係と実海域の水温データから,約2か月毎のカキ個体の成長過程を推測した.

  • 高橋 真司, 竹門 康弘, 大村 達夫, 渡辺 幸三
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_115-III_123
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究は,ダム上下流河川の生息場構造及びその河川環境条件が底生動物の群集構造へ及ぼす影響を評価することを目的とした.生息場は流水部1種と止水性生息場3種(砂州頭ワンド,砂州尻ワンド,たまり)の計4種に分類し,それぞれの生息場について環境調査と底生動物の定量調査を行った.調査の結果,流水部と止水性生息場間で河川環境条件が異なることが明らかとなった.各生息場間の空間要素(ダム影響,生息場面積,止水性生息場スコア)と環境要素(流速,EC)の変動は底生動物の群集構造の変動の34%を説明した.群集構造の変動に対する説明力は,空間要素が環境要素よりも若干高くなっていた.止水性生息場は河川内の生息場異質性を高め,地点内の底生動物群集のγ多様性を底上げていることが示された.

  • 渡辺 晃平, 橋本 崇史, 片山 浩之
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_125-III_134
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     ろ過膜の劣化による微細構造の変化や微小損傷に起因する阻止性能低下は,従来の完全性試験での検知が困難である.そこで,新たな検知手法として,フローサイトメトリー(FCM)によるウイルス粒子定量を応用することを目指して,FCMによるウイルス粒子定量性に影響する夾雑物の除去方法,およびろ過膜チャレンジテストへの適用性を検討した.超遠心分離,培地除去とDNase, 培地除去の3種の精製方法について夾雑物の除去効果を評価したところ,超遠心分離,および培地除去とDNaseで高い精製効果と定量性が得られたが,超遠心分離ではウイルスの不活化影響が示唆された.培地除去とDNaseによる精製方法を精密ろ過膜のチャレンジテストに適用した結果,使用済み膜のT4ファージ阻止性は2log程度であり,また培養法から得られた阻止性と同程度であった.これらより,FCMによるウイルス粒子定量がチャレンジテストへ応用可能であることが示された.

  • 中村 拓海, 角田 貴之, 羽深 昭, 小野 将嗣, 木村 克輝
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_135-III_142
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では膜の細孔径または材質のみが異なる膜を用意し,実都市下水を原水とするベンチスケールMBRを用いて定流量ろ過を行い,ファウリングの進行速度を比較した.同じ材質(CPVC製),同様の開孔率で細孔径が異なるUF膜とMF膜を用いた実験では,両膜のファウリングの進行速度にほとんど差はなかった.局所的フラックスが同程度であれば細孔径がファウリング発生に及ぼす影響は小さいことが本実験では示唆された.膜構造がほぼ同様のCPVC製UF膜とPVDF製UF膜を用いた実験では,CPVC製膜の方がPVDF製膜よりもファウリングの進行速度が速かった.本研究で設定したフラックス範囲(0.72-0.90m/d)において,PVDFはCPVCに比べファウリング発生を抑制できる膜材質である可能性が示された.本研究で発生したファウリングはいずれもバイオポリマーを主な構成成分とする膜表面ゲル層によるものであったが,SEM観察およびFT-IR分析ではゲル層特性の差異を検討することはできなかった.

  • 中川 颯人, 木内 壮一朗, Helmano Fernandes , 羽深 昭, 木村 克輝
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_143-III_148
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     膜分離活性汚泥法には活性汚泥法と比べて多くの長所があるが,膜ファウリングが問題となる.本研究グループではこれまでに気泡径数百nmの気泡を含む水(ナノバブル水)を用いた膜の逆洗はMBRの膜ファウリング抑制に有効となりうることを見出しているが,逆洗条件の詳細な検討は行われていない.本研究ではMBRファウリング物質のモデル化合物として多用されるアルギン酸ナトリウムによりファウリングを発生させたセラミック平膜を用い,ナノバブル逆洗の洗浄効果が高くなるような洗浄方法を検討した. 本研究では筆者らが従来用いてきたナノバブル水による洗浄効果は小さかったが、より高濃度のナノバブル水を用いることで洗浄効率が上昇することが確認された. ナノバブル逆洗の洗浄効果が高くなる理由はナノバブル崩壊時に発生するラジカルの関与ではなく,ナノバブルがファウリング層の構造を弛緩させたことに伴う物理的洗浄の高効率化が主であると考えられた.

  • 福嶋 俊貴, 西村 文武
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_149-III_156
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     モデル地域を対象に,広域化・効率化による地域の汚水処理施設からのGHG排出量の削減ポテンシャルを,省エネ施策や消化ガス発電といった創エネ施策,焼却N2Oを対象としたGHG削減施策を総合的に評価した.広域化施策では集落排水処理施設の統合により現状の合計値10,200kg/日が7,000kg/日(31.4%削減)となり,し尿処理統合の統合により発電量が2割近く増加し,現状の合計値11,300kg/日が6,500kg/日(42.5%削減)となった.効率化施策では現状の18,200kg/日が,省エネによる電力消費削減で16,700kg/日まで低下(8.2%削減)でき,創エネによる発電量増加で14,900kg/日まで低下(18.1%削減)できた.GHG削減施策としては,汚泥含水率の低下で燃料が半分以下に削減でき15,400kg/日まで低下(15.4%削減)でき,焼却N2O発生対策により12,500kg/日まで低下(31.3%削減)できると試算された.モデル地域全体におけるGHG排出量は現状の36,500kg/日が15,600kg/日まで低下(57.3%削減)できると見積もられた.削減後のGHG排出量(15,600kg/日)の6割以上は下水道施設由来であり,更なる省エネ・創エネ技術の開発・実装が必要と考えられる.

  • 鈴木 遥介, 柏岡 美咲, 寺﨑 寛章, 福原 輝幸, 谷口 晴紀, 安本 晃央
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_157-III_163
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究はライニング地中熱交換器を用いた地中熱ヒートポンプシステムが導入された事業所を対象に,消費電力の大きい冷房時に着目して簡便にヒートポンプの消費電力量を予測する方法を提案し,出力制御による省エネ効果を検討することを目的とする.まず冷房実験のデータを用いてヒートポンプの負荷率および一次側入口水温を説明変数としたCOPの重回帰モデルを構築した.さらに,本モデルを用いて出力制御の効果的な稼働方法について基本的な検討を行った.その結果,本計算条件下において,ヒートポンプの最大出力のセーブ率(定格能力に対する最大出力の削減率)の最適化によってヒートポンプの日積算消費電力量は出力制御をしない場合のそれに比べて約30%程度削減可能であることが示唆された.

  • 佃 成槻, 酒井 宏治
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_165-III_176
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     水道事業体の経営状況を適切に把握するための指標として,「ヒト・モノ・カネ」の3観点からそれぞれ2指標ずつを取り上げたほか,用水供給からの受水についても2指標を取り上げ,相関分析やクラスター分析などの手法を用いて分析を行った.その結果,給水人口規模が小さくなるにつれ,営業収支比率・料金回収率が小さくなり,特に1万人未満の事業体の多くが給水収益だけで費用を十分に賄えていないことがわかった.また,大規模事業体ほど固定資産の削減や委託職員の活用など,業務の効率化を図る取り組みが行われていること,小規模事業体ではそれぞれの事業体で経営状況に大きな差があること,などの特徴があることがわかった.さらに,広域化,官民連携を実施した事業体では委託職員率の上昇などで事業の効率化が図られており,特に広域化事業体では受水比率の大幅な減少がみられるなど当初の施策の目的は指標にも表れているものの,経営状況の大幅な改善には至っていないことが示唆された.

  • 山本 祐士朗, 小野 順也, 永井 梨奈, 羽深 昭, 木村 克輝
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_177-III_184
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     膜を用いた上下水処理には従来の方法と比較して様々な利点がある一方で,膜ファウリングが大きな問題となる.近年の研究において,バイオポリマーと総称される高分子量親水性有機物が膜ファウリングの発生に強く関与することが示唆されている.しかし水中バイオポリマーの組成,構造,特性については不明な点が未だに多い.本研究では水道原水,下水処理水よりバイオポリマーを回収・精製し,特定の多糖,タンパク質に対応する酵素(α-アミラーゼ,セルラーゼ,プロテアーゼ,リゾチーム)によるこれらの分解性を検討した.LC-OCDを用いることで,一般的な水質分析では検知できない酵素による分解性(バイオポリマーの低分子化)を把握することができた.水道原水より回収したバイオポリマーではα-アミラーゼとセルラーゼによる分解が卓越したのに対し,下水処理水より回収したバイオポリマーではリゾチームによる分解が卓越した.この結果は本研究で分析した2種類のバイオポリマーの構造と特性が大きく異なることを明示するものであり,これまでに得られていない知見である.本研究で確立したバイオポリマーの酵素分解性評価手法を用いて様々なバイオポリマーと酵素の組み合わせを検討することにより,これまで詳細が不明となっていたバイオポリマーの構造解明を進展させられる可能性がある.

  • 渡辺 あかり, Dhimas DWINANDHA , Qing Long FU , 藤井 学
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_185-III_194
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     塩素消毒によって天然有機物(NOM)から消毒副生成物(DBP)が生じうる.本研究では,超高分解能質量分析を用いて重水素標識Xn-DBP(Xnはハロゲンで塩素,臭素,ヨウ素のいずれかを示す)の分子式を同定することで,DBPの前駆体NOMならびに反応経路を明らかにすることを目的とした.その結果,Xn-DBPの多くが共通の分子式から生じていた.DBP生成における親電子付加反応および置換反応の相対的寄与は,反応に関与するハロゲン種に依存し,次亜ハロゲン酸種の酸性度が反応経路に影響を及ぼす可能性が示された.さらに,NOMの分子特性からDBP生成の有無を予測する二値分類機械学習モデル(ランダムフォレスト)を構築した結果,モデルは高い予測精度を示し,I-DBPの生成においては前駆体NOMの炭素酸化状態等が重要な因子であることが示唆された.

  • 山口 武志, 山下 尚之, 田中 宏明
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_195-III_203
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     雨天時に水量が増大する合流式下水道の受水域河川水の溶存態有機物(DOC)濃度と蛍光性溶存態有機物(FDOM)のうちタンパク質様成分のスコア値,及びFDOM/DOCの経時変化を,下水処理場の簡易処理放流の発生の前後で調査した.下水処理場からの簡易処理放流量と河川流量の比率(下水混入率)とこれら3つの溶存態有機物指標の絶対値や時間変化量の関係を整理し,溶存態有機物指標の閾値を設定することで,下流河川の地点で簡易処理放流の発生を検出するのに3つの指標のうちどれが有効なのかを,二値分類による機械学習でのクラス分類である混同行列を用いた手法で評価した.その結果,本研究では,正解率,F値が大きくなるDOC濃度とFDOMの絶対値が,下流河川地点での簡易処理放流発生の検出に有効であることが示された.

  • 赤尾 聡史, 川口 竜世, 佐々木 航介, 高田 雅史, 竹内 健人
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_205-III_212
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     バイオマスプラスチックであるポリ乳酸の製造コスト低減化には,発酵液からの乳酸精製法の改善が必要とされる.本研究では,乳酸カルシウム晶析法に代わりキトサンを用いた乳酸塩による乳酸精製法を検討した.乳酸発酵過程でキトサンを中和剤として用いてキトサン乳酸塩を生成し,アセトンを用いた貧溶媒添加法によりキトサン乳酸塩を培養液から回収する方法を示した.また,キトサン乳酸塩をアンモニア水中に添加することで,乳酸アンモニウムとキトサンを分離回収した.貧溶媒添加法を用いたキトサン乳酸塩の回収あるいはアンモニア水からのキトサンの回収では,キトサンは高分子である方が有利と考えられた.なお,回収された乳酸アンモニウムはポリ乳酸の原料に,キトサンは再び乳酸発酵の中和剤として利用可能である.

  • 友成 悠斗, 日高 平, 中村 真人, 折立 文子, 野村 洋平, 藤原 拓
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_213-III_222
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     廃棄物系バイオマスのメタン発酵でpHに影響を及ぼす有機酸の例として乳酸に着目し,回分式実験によるメタン発酵特性および酸滴定時のpH挙動を解析した.回分式実験にて乳酸を17.2gCOD/L投入した場合,pHが種汚泥の7.4から6以下に低下しメタン発酵が阻害された.11.5gCOD/Lの乳酸および乳酸当量に対応する水酸化カリウムを投入すると,メタン発酵への阻害影響は見られず,投入乳酸由来のCODに対するメタン発生量の割合は0.8程度であった.処理対象基質の異なるメタン発酵の実施設の汚泥について,酸塩基平衡に基づくpHの計算を試みた結果,酸滴定に伴うpH低下を概ね再現できた.アンモニア濃度などを含む汚泥性状の分析結果から,槽内有機酸濃度に対応するpHを予測できることが確認された.

  • 片平 智仁, 原田 隆大, 潟 龍平, 上薗 一郎, 中村 憲知, 山田 真義, 黒田 恭平, 碇 智, 山口 隆司, 山内 正仁
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_223-III_231
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,下水汚泥と地域バイオマスを用いた新規下水汚泥肥料の量産化試験を5m3規模で実施し,得られた肥料の成分分析,窒素無機化試験,植害試験および茶栽培試験を行った.その結果,全窒素量3.6~3.9乾物%で,かつ低重金属含有量の肥料を量産化することができた.また新規下水汚泥肥料は,アンモニア態窒素を0.95%含んでいることから,好アンモニア性植物の茶樹に適していると考えられた.窒素無機化試験では新規下水汚泥肥料は有機質肥料の菜種油粕と無機化パターンが大きく異なることがわかった.植害試験では新規下水汚泥肥料を用いた試験区は生体重指数が115以上(対照肥料区87~115,標準区100)であり,生育阻害物質は含まれていないと考えられた.さらに茶栽培試験では菜種油粕と同等以上の収量を得ることができ,新規下水汚泥肥料を茶栽培へ適用できることがわかった.

  • 長濱 祐美, 木村 夏紀, 湯澤 美由紀, 福島 武彦
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_233-III_240
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     近年,流域の都市化が見られる茨城県南部の牛久沼において,牛久沼ならびに流入河川の水質と,牛久沼の植物プランクトンの変化を明らかにし,近年の牛久沼におけるCODの変動要因について考察した.その結果,牛久沼のCODは減少傾向であったが,TN,TPは横ばいであった.流入河川のCOD,TNならびにTPの3河川平均濃度はいずれも減少し,これは都市化に伴う田畑の減少や下水道の整備の影響と考えられた.牛久沼のCODと,流入河川のCOD,TN,TPがともに減少していたことから,流入河川の水質の向上が牛久沼におけるCOD減少の原因の一端を担っていたと推察された.一方で,牛久沼ではp-CODが占める割合が相対的に高く,CODとクロロフィル量とがよく一致していたことから,牛久沼のCOD変動に対しては,植物プランクトンを主とする内部生産の影響が大きいと示された.植物プランクトンは,ほとんどの時期にりんによって制限されていると示唆されたことから,牛久沼の水質変動を把握するためには,りん負荷量ならびに,底泥からのりん回帰フラックスを注視する必要がある.

  • 玉井 昌宏
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_241-III_252
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     阿蘇五岳と外輪山によって盆地形状となっている火口原地域においては,大気汚染常時監視のような体系的な観測は行われておらず,SO2ガスの濃度レベルや分布特性など全容は明らかになっていない.本論では,火口原地域において大気環境観測車により観測された二酸化硫黄SO2の濃度データと種々の気象データを分析して,環境基準を超過する高濃度事象と気象状況との関連性を検討した.加えて,WRFによる数値計算を実施して,火口から火口原底部の濃度観測地点に至るまでのSO2の鉛直輸送メカニズムを検討した.高濃度事象日を対象とした気象データの分析ならびに数値計算結果より,山岳波による斜面下降風(trapped lee wave)や山風による鉛直方向の輸送によって高濃度状況が生じることを明らかにした.

  • 坂巻 隆史, 畠山 勇二, 齋藤 隆矢, 西村 修
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_253-III_262
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     火力発電所6施設の冷却系水路を対象に,3回の採水調査と計18水路系統71清掃機会の廃棄物処理量データを基に,潜在的餌料としての流入有機物量と水路付着生物の餌要求量の比(S/D)を推定した.その結果,S/Dは,付着生物の生産/バイオマス比を基に0.48―23.8(中央値3.55),付着生物のろ過摂食量を基に0.21―19.2(中央値1.99)とそれぞれ推定された.水路への有機物流入量や付着生物の餌要求量と同量の有機物を除去するのに,水路取水口前面海域にカキを水深10mまで垂下養殖しろ過摂食させる場合,必要面積は数万m2のオーダーと推計された.現状では生物付着対策のための取水口前面海域の利用に向けては,利害関係者間の調整等が容易ではないと考えられる.しかし,他の生態系サービスの創出と関連付けることで本アプローチへの理解と実現の可能性を高められるかについて検討の余地がある.

  • 岡 俊輔, 氏家 慶介, 風間 しのぶ, 小熊 久美子, 滝沢 智
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_263-III_274
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     途上国を中心に水を起因とする下痢症は未だ深刻な課題であり,公衆衛生的介入を経ても,水と衛生に関する意識や行動の変容には繋がらず,持続的な状況改善が実現できていない.そのため,地域の疫学的情報や社会的背景を踏まえた介入施策が求められているが,過去の施策による人々の意識・行動の変化を分析した研究は少ない.本研究では,これまで日本が実施したODA事業23件の施策とその評価をもとに,住民の水と衛生に関する意識と行動の変容に寄与した施策の質的比較分析をおこなった.その結果,住民の施策への参加や教育の実施が水と衛生の両方の意識と行動変容に有効である仮説が得られた.本研究により,水と衛生に関する国際協力の発展に向けた仮説が複数立てられた一方で,報告書に記載された情報のみで分析を行うことへの課題も明らかになった.

  • 小山 友梨子, 平山 奈央子, 森永 晃司, 大村 達夫, 渡部 徹
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_275-III_284
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究は,行政からの対策要請期間中における感染症対策強化の実態と意思およびそれらに影響を与える要因を,アンケート調査をもとに明らかにした.まず,COVID-19パンデミックから2年が経過していたこともあり,対策要請期間中にもかかわらず対策を強化している人は少なく,強化の程度は小さかった.ただし,今後1週間で市内の感染者数が1,000人に増えるという下水モニタリング情報は深刻に受け止められ,対策強化意思に影響を与えていた.その構造として,下水ウイルス情報発信サイト利用者の場合,感染リスク認知が高い,経済的不安が強い,または,利他的な人ほど,他者の対策不足に対して嫌悪感を抱き,対策強化意思を強めた.また,対策強化実態は追加の対策強化意思に影響を与えなかった.この構造は非利用者のそれと異なっていた.

  • 服部 啓太, 對馬 育夫, 中西 哲, 猪股 広典, 山下 洋正
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_285-III_296
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     近年,気候変動の影響による水環境の変化が顕在化しており,ダム貯水池においては植物プランクトン濃度等の変化が懸念される.そこで,本研究では気候変動によるダム貯水池の植物プランクトン濃度への影響評価と植物プランクトン濃度増加に対する適応策と考えられる曝気循環施設の有効性を評価するための数値計算をダム貯水池の規模を変化させた仮想ダム貯水池で行った.計算の結果,将来気候シナリオでは5-6月の表層Chl-a濃度の上昇傾向がみられ,気温上昇が大きいシナリオほどその傾向は強く,すべての貯水池規模で同様の傾向がみられた.また,将来気候シナリオにおいて曝気循環施設による適応策の効果を試算した結果,気候変動の影響により上昇した表層Chl-a濃度を一定の割合で低減可能であることが示され,曝気循環施設の植物プランクトン濃度増加に対する適応策としての有効性が確認された.

  • 石川 奈緒, 小林 大晟, 加藤 輔, 野村 咲希, 伊藤 朋子, 岩渕 勝己, 高橋 律久, 笹本 誠, 伊藤 歩
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_297-III_306
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     下水処理水から検出された5種類の抗菌剤(ロキシスロマイシン(ROX), クラリスロマイシン(CLR), レボフロキサシン/オフロキサシン(LEV), スルファメトキサゾール(SMZ), スルファピリジン(SPD))について,ゼオライトを用いた抗菌剤の除去処理を検討した.各抗菌剤溶液を1時間処理した場合の除去率はROX, CLRでは93%以上,LEVでは60%以上であったが,SMZとSPDは7%以下であり,この除去傾向は下水処理水のろ液(下水処理液)をゼオライト処理した場合も同様であった.特にToxic Unitが高いCLRが除去されることにより,ゼオライト処理液の生態毒性は顕著に減少し,さらに短期毒性試験により処理液についてR.subcapitataへの安全性が確認された.一方,下水処理液中の溶存有機物がゼオライトに吸着するため,長期間連続的にゼオライト処理を行った場合の除去効果の継続性について検討する必要性が示された.

  • 森 祐哉, 西山 正晃, 米田 一路, 渡部 徹
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_307-III_316
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     山形県庄内地方を流れる赤川,最上川から大腸菌を分離し,その分離株について,系統発生群の分類とその薬剤感受性を評価した.1年間のモニタリングにより,653株の大腸菌が得られ,7つの系統発生群のうち,病原性の高いB2群に最多の217株(33.2%)が分類された.全大腸菌分離株のうち,1薬剤以上に耐性を示した株は175株(26.8%)であり,第三世代セフェム系抗菌薬であるCTXやCAZや,カルバペネム系抗菌薬(IPM)に耐性を示し,ESBL産生菌やCREの疑いが高い株が存在した.また,66株(10.1%)が異なる3つ以上のグループの抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌であり,その中には合計7薬剤に耐性を示す株も存在した.大腸菌による汚染度の低い河川から上記のような薬剤耐性大腸菌が検出されたという事実は,環境中における耐性菌のモニタリングの重要性を示している.

  • 杉江 由規, 馬 緻宇, 湯 鈺, 趙 博, 五味 良太, 西村 文武, 田中 宏明, 井原 賢
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_317-III_326
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では滋賀県の琵琶湖およびその流域河川において薬剤耐性大腸菌の存在実態を調査した.降雨時の出水が河川中の大腸菌数および薬剤耐性大腸菌数の増加に影響を及ぼすことが示唆されたため,野洲川の流量測定点において出水時に連続的な大腸菌数の詳細な時間変動を調査した.その結果,河川増水時に大腸菌や薬剤耐性大腸菌の菌数が大幅に上昇することが明らかとなった.さらに,下水処理場や河川,琵琶湖より単離したテトラサイクリン耐性大腸菌のゲノム解析を通じて,その起源を推定した.さらに,流域河川の調査結果から,河川中の薬剤耐性大腸菌数と流域の土地利用との関係を調べ,汚染要因を推定した.これらの結果から,琵琶湖水系における薬剤耐性菌の存在実態が流域における人為活動の影響を受けている可能性,および琵琶湖水系における大腸菌および薬剤耐性大腸菌の負荷はヒトだけでなく家畜の寄与も大きいことが示唆された.

  • 尾川 裕紀, 鈴木 裕識, 髙沢 麻里, 小口 正弘, 栗栖 太
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_327-III_338
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     LC-QTOF/MSによる水環境中の新興汚染物質群(CECs)の簡易かつ迅速なターゲットスクリーニング(TS)解析の実現を目的として,TSデータベース(TS-DB)におけるフラグメントイオンの精密m/z値の登録内容と予測保持時間の設定,解析条件における質量誤差範囲と保持時間許容範囲の設定の各条件を検討し,整理した.次に,CECs102種を収録したTS-DBと見出したTS手順を木曽三川流域の河川水15試料に適用した結果,CECs30種を検出した.CECsの含有プロファイル解析から揖斐川,長良川,木曽川の本川と支川におけるLAS類,PPCPs,PFASsの各挙動が示された.TS結果に加え,用途情報や検出強度相対値を用いることで,定量せずに対象物質の存在状況や特徴を把握できる可能性が示された.

  • 山村 裕汰, Shih Wei TAN , 滝澤 雅子, 野村 洋平, 日高 平, 大下 和徹, 高岡 昌輝, 田中 周平, 藤原 拓
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_339-III_347
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     オキシデーションディッチ法(OD法)の汚水処理施設におけるマイクロプラスチック(MPs)の動態および排出量を把握する目的で5か所の施設で調査を行った.長軸径0.5mm以上5mm未満の放流個数密度は2.0~4.5×10個/m3,質量密度は1.87×10-2~7.72mg/m3であった.下水処理プロセスにおいてMPsは細分化されて個数が増加するが,そのほとんどが汚泥とともに搬出されていることが明らかになった.また,OD法二次処理での平均個数除去率は92%,質量除去率は90.6%であり,砂ろ過での平均個数除去率は87%,質量除去率は96.7%であった.日本でOD法を採用している下水処理場全体でのMPs年間総排出量を推算した結果,長軸径0.5mm以上5mm未満のMPs年間個数排出量は1.4×1010個/年,質量排出量は1.16×103kg/年であり,長軸径1mm以上5mm未満の個数排出量は7.9×109個/年,質量排出量は1.11×103kg/年であった.

  • 山本 可那子, 古米 弘明
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_349-III_358
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     道路塵埃は,海洋へ流出するマイクロプラスチック(MPs)の主要発生源の一つであるとされ,タイヤを発生源とするゴム片が確認されており,生態系への悪影響が懸念されている.しかし,タイヤは様々な物質の混合物であるほか,カーボンブラックによりスペクトルの吸収残渣の増大が生じることで,付属のライブラリに基づくATR-FTIRでの材質同定に限界があった.そこで本研究では,複数メーカーのタイヤから採取した小片のスペクトルを標準スペクトルとしてライブラリに登録することにより,MPs分析対象サンプルがタイヤか否かを判断する手法について検討を行った.用途や採取部位の違いによりタイヤ小片のスペクトル形状は異なる傾向を呈した.市街地の道路塵埃及び路面排水施設内堆積物の試料中における黒色MPsの材質分析においてタイヤライブラリも参照した結果,タイヤライブラリはタイヤ小片の検出やその材質同定方法の改善に有用であるものと考えられた.

  • 佐野 航士, 奥田 雄眞, 羽深 昭, 木村 克輝
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_359-III_368
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     リン酸態リン(PO4-P)は生物利用性が高いため,湖沼での有害藻類ブルーム発生を防ぎ,水環境を保全するためにもPO4-P濃度のモニタリングは必要不可欠である.しかし,一般的なグラブサンプリングとPO4-P分析では,得られる濃度の代表性と分析方法の感度に課題がある.そこで本研究では,河川および湖沼において低濃度で存在するPO4-Pの時間平均濃度をパッシブサンプリングによって推定した.その結果,サクシュコトニ川ではグラブサンプリングで得た試料水中の溶存態リン濃度と近い時間平均PO4-P濃度が算出された.茨戸湖でのパッシブサンプリングでは通常は定量が困難な低濃度のPO4-Pに対し,その時間平均濃度の鉛直分布を得ることができた.

  • 畠山 勇二, 丸尾 知佳子, 西村 修, 坂巻 隆史
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_369-III_379
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     内湾底層の溶存酸素消費につながる粒状有機物の沈降過程での化学組成や分解活性の変化を明らかにするため,宮城県志津川湾において異なる水深帯から沈降性と浮遊性の粒状有機物を採取した.沈降物の長鎖多価不飽和脂肪酸(C≧20PUFA)含有量は比較的高く,C≧20PUFAを相対的に多く含む有機物が沈降していることがわかった.また,沈降物中のC≧20PUFA含有量は水深方向に減少し,沈降過程で易分解性の粒状有機物が分解によって減少していると考えられた.沈降物のC≧20PUFA含有量と酸素消費速度との正の関係から,水深方向への分解に伴う粒状有機物の酸素消費活性の低下が示された.以上より脂肪酸組成は,内湾の比較的浅い海域であっても沈降過程における易分解性の粒状有機物の組成や分解性の変化を高い感度で捉えられる有用な指標になると考えられる.

  • 大久保 慧, 西嶋 渉, 泉 伸司, 小野 健
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_381-III_389
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     瀬戸内海の環境を考える上で重要となる底質からの栄養塩の溶出量を把握するために、既存の文献等から溶出データ、環境データを収集し、水温、底層溶存酸素濃度、底質有機物量の3項目から栄養塩の溶出量を推定することを試みた。底質有機物量の指標には、全有機炭素及び強熱減量を用い、推定する栄養塩は溶存無機態窒素(DIN)及び溶存無機態リン(DIP)とした。作成した式と、瀬戸内海の環境データから、瀬戸内海全域のDIN及びDIPの溶出量を推定した。瀬戸内海全域の溶出量は、1980年頃から増加した後に減少に転じ、2015年頃には1980年頃を下回る値となった。また、瀬戸内海全域における近年の溶出量の減少は、特に溶出量が多い海域において、その溶出量が減少したことが大きな要因であると示唆された。

  • 上杉 健史郎, 畠山 勇二, 丸尾 知佳子, 西村 修, 坂巻 隆史
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_391-III_399
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     化学肥料合成・消費によって水環境への窒素放出が増している.藻類種の化学組成の変化は,二次生産者への餌料価値や沈降・分解を通じた底層環境への作用にも影響しうる.本研究では単一珪藻種を用いて,培養海水の窒素濃度が細胞の化学組成(炭素,窒素,必須脂肪酸),酸素消費,沈降速度に及ぼす影響を評価した.その結果,3.0mg-N/L系までは窒素濃度が高いほど炭素量あたりの必須脂肪酸含有量が高く,餌料的価値も高くなることが示された.しかしそれ以上の窒素濃度では必須脂肪酸含有量が低下した.同珪藻種が必須脂肪酸を効率的に合成し高い含有量で保持できる海水中の窒素:リン比は,12:1であることも示唆された.珪藻細胞の沈降速度への培養海水の窒素濃度の影響は見られなかったが,増殖期の酸素消費速度は海水窒素濃度と正の関係があり,沈降後の底層環境への悪影響が大きい可能性が示唆された.

  • 関根 雅彦, 加藤 琢己, 中尾 遼平, 赤松 良久
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_401-III_408
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     多自然川づくりなどための魚類調査の労力を軽減するため,生物から水中に放出されるDNA(環境DNA)分析が注目されているが,断面代表値を得るための採水方法や流下距離は不明確である.本研究では,まず河川2断面の横断方向3点,水深方向2点の計6点で採水し,メタバーコーディング解析を行うことで,横断面での環境DNAの分布と断面代表試料の採水方法を検討した.次に10断面で採水してqMiFish法で定量分析し,上流で検出され,下流では検出されない魚種の事例を収集し,環境DNAの減少速度係数を求め,流下距離を推定した.その結果,横断方向3点で表層水を採水することでほぼ断面を代表する試料が得られること,環境DNA減少速度係数は3.55[hr-1]であり,流下距離は環境DNA濃度と流速に応じて0.1~3.5kmに変化することを示した.

  • 鬼束 幸樹, 宮川 智行, 下江 海斗
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_409-III_414
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     長良川には塩水遡上を防止するために河口堰が設置されたが,堰下流域の底層には高塩分濃度水が停滞することがある.また,長良川河口堰にはせせらぎ魚道が併設されているが,大潮時には塩水くさびが魚道低層を遡上する弱混合型であることが示されている.以上より,河口堰下流域および魚道内には密度成層が形成されるため,遡上中のニホンウナギは塩分濃度の異なる状況に突然遭遇すると推測される.また,全長110mm以下のニホンウナギは浸透圧調節機能が未発達のため,塩分濃度の急変に遭遇した際に斃死し易いとの指摘があり,魚道下流域の密度成層を破壊し強混合型のバッファーゾーンを設ける必要がある.本研究では,海水と同等の塩分濃度3.5%の環境水に馴致したニホンウナギ未成魚を0~3.5%に変化させた塩分濃度の実験水に投入し,遊泳挙動を解析した.その結果,濃度3.5%の塩水に馴致したニホンウナギ未成魚は塩分濃度が2.0%以下に急低下すると,塩分濃度の急変に追随できないことが明らかとなった.したがって,バッフルブロックなどを用いて魚道下流域の密度成層を破壊することで,塩分濃度が約2.0%となる強混合型のバッファーゾーンを設け,一度ニホンウナギをこの領域で馴致させることで減耗の少ない遡上が可能になることが示唆された.

  • 鬼束 幸樹, 墨 勇哉, 夏山 健斗
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_415-III_423
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     ウナギの遡上には魚道底面に円柱突起物を施した魚道が有効であることが解明されつつある.しかし,テープ状のゴミや可撓性のある長い植生の断片などが魚道内に流れ込むと円柱突起物に絡んで間隙が閉塞され,遡上が困難になることが危惧される.本研究では,上記の問題を解決可能な底面に桟粗度を有するウナギ用斜路式魚道を提案した.桟粗度間隔を50~200mm,流量を140~540ml/sに変化させ,全長200mmのニホンウナギ未成魚の遡上に適した桟粗度間隔を探索した.その結果,100mm,つまり全長の0.5倍が桟粗度間隔として適していると判明した.これは,桟粗度間隔が全長の0.5倍の場合は桟粗度間の溝に躯幹を入れ込みやすいために壁面摩擦を得ることができ,また,上流側桟粗度を乗り越える際に下流側桟粗度を遡上反力の支持物体として利用可能なためである.一方,桟粗度間隔が全長の0.25倍では桟粗度間に躯幹を入れ込みにくく,全長の0.75倍以上では下流側桟粗度に尾部が接触しづらいために,共に遡上率は低下する.

  • 湯谷 賢太郎, 三森 彩音, 堀切 もも子
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_425-III_430
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,LED照明の色と照度の違いが希少種で夜行性であるトウキョウサンショウウオの夜間活動量に及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を行った.実験には白色,青色,緑色,黄色,赤色のLEDを用い,1ルクスと10ルクスの照度下での本種の夜間活動量を消灯時の活動量と比較した.

     1ルクスの実験では,白色光を照射した場合の本種の活動量は消灯時と比較して32%となり,青色光では42%,緑色光では44%,黄色光では64%,赤色光では35%となった.また,10ルクスでの実験では,照明の色に関わらず多くの個体が活動を行わず,活動量は消灯時と比較して0%から29%となった.このことから,照度が高くなれば,光色に関わらず本種の活動量は抑制されると考えられた.本研究より,同じ照度において夜間活動量を抑制する影響の大きさは白色≒赤色>緑色≒青色>黄色となると考えられた.

  • 山﨑 廉予, 重村 浩之
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_431-III_440
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,実下水処理場での植物系バイオマス混合脱水システム導入における,バイオマス混合箇所の選定における情報収集を目的とし,消化汚泥,凝集剤および植物系バイオマスの混合条件について調査した.その結果,汚泥と植物系バイオマスを先に混合することで,凝集剤を先に混合するよりも脱水ケーキ含水率低減効果,ろ液へのバイオマス流出抑制効果,脱水ケーキ発生量の削減効果が高いことを示した.汚泥中にバイオマスが最も混合される薬注率の条件は,最低薬注率付近に存在することが示された.バイオマスの混合割合は,固形物比15%が最適であるが,5%~15%と幅広い範囲で効果がみられた.バイオマス選定においては,含水率低減効果の影響要因の一つとして吸水率を調査する意義があることを示した.

  • 羽間 悠菜, 黒田 啓介
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_441-III_448
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     グラフィティックカーボンナイトライド(以下CNとする)は可視光で駆動し合成が容易な光触媒である。本研究ではCNと生分解性の吸着剤であるキトサンを用いて環境配慮型で固液分離が容易な光触媒担持吸着剤(CS/CN)を新たに開発し、有機色素であるアシッドブラック1(AB1)とマラカイトグリーン(MG)の吸着・分解特性を評価した。その結果、光触媒単独による色素分解実験では明条件においてCNは180分から390分で色素をほぼ除去した(除去率94%以上)。CS/CNを用いた色素吸着・分解実験ではキトサン吸着剤のみでは除去しきれなかった色素を明条件では除去することができた(除去率 91%以上)。CNはTiO2(二酸化チタン)と比較し反応速度が小さかったことからCNの光触媒活性向上などの課題はあるが、CNを用いた光触媒担持吸着剤は様々な汚染物質の除去に有効である可能性が示された。

  • 池上 麻衣子, 福谷 哲
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_449-III_458
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     土壌中の粘土鉱物は重金属など元素を吸着し,その吸着能は粘土鉱物の種類により異なる.また,粘土鉱物を加熱することで,粘土鉱物が物理的,化学的に変化し,その変化が重金属など元素の吸着に影響を与える可能性がある.本研究では,カオリナイトなどの1:1型層状ケイ酸塩鉱物,ハイドロバイオタイトなどの2:1型層状ケイ酸塩鉱物を加熱し,pHの異なる条件で,重金属など元素を吸着させた.その結果,カオリナイト,ディッカイトは500℃で,パイロフィライトは1000℃で吸着率が減少し,ハイドロバイオタイトはCsを除き,加熱温度に関係なく,高い吸着率を示した.また,加熱温度により,粘土鉱物の構成元素の溶出率が変化し,重金属など元素を吸着させると,溶出量が増加した.加熱によりpHが変化する粘土鉱物もあったが,その変化と重金属吸着,構成元素溶出に関係性は見られなかった.加熱により構造や吸着能が変化し,その変化が元素の吸着に影響を及ぼしていることがわかった.

  • 黄 仁姫, 宇都野 久, 東條 安匡, 松尾 孝之
    2022 年 78 巻 7 号 p. III_459-III_466
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,重曹を微粉化せず真空加熱処理を行うことで,粗重曹からあらかじめ多孔質化した炭酸ナトリウムを製造し,ごみ焼却排ガス中塩化水素および硫黄酸化物の処理に用いる方法を検討した.その結果,粗重曹の真空加熱により多孔質化が進み,微粉重曹を常圧加熱したものより高比表面積を持つ多孔質炭酸ナトリウムが得られた.なお,SEM分析および細孔分析の結果から,真空度の高い低圧のほどメソ孔容積が増え,比表面積も増加することがわかった.製造した多孔質炭酸ナトリウムの酸性ガス除去性能は,比表面積の増加につれ向上することが確認できた.また,排ガス中の水分が多孔質炭酸ナトリウムによる酸性ガス除去率の向上につながることがわかった.

feedback
Top