土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境工学研究論文集 第59巻
酵素分解性に基づく水中バイオポリマー特性評価手法の検討
山本 祐士朗小野 順也永井 梨奈羽深 昭木村 克輝
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2022 年 78 巻 7 号 p. III_177-III_184

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抄録

 膜を用いた上下水処理には従来の方法と比較して様々な利点がある一方で,膜ファウリングが大きな問題となる.近年の研究において,バイオポリマーと総称される高分子量親水性有機物が膜ファウリングの発生に強く関与することが示唆されている.しかし水中バイオポリマーの組成,構造,特性については不明な点が未だに多い.本研究では水道原水,下水処理水よりバイオポリマーを回収・精製し,特定の多糖,タンパク質に対応する酵素(α-アミラーゼ,セルラーゼ,プロテアーゼ,リゾチーム)によるこれらの分解性を検討した.LC-OCDを用いることで,一般的な水質分析では検知できない酵素による分解性(バイオポリマーの低分子化)を把握することができた.水道原水より回収したバイオポリマーではα-アミラーゼとセルラーゼによる分解が卓越したのに対し,下水処理水より回収したバイオポリマーではリゾチームによる分解が卓越した.この結果は本研究で分析した2種類のバイオポリマーの構造と特性が大きく異なることを明示するものであり,これまでに得られていない知見である.本研究で確立したバイオポリマーの酵素分解性評価手法を用いて様々なバイオポリマーと酵素の組み合わせを検討することにより,これまで詳細が不明となっていたバイオポリマーの構造解明を進展させられる可能性がある.

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