2022 年 78 巻 7 号 p. III_317-III_326
本研究では滋賀県の琵琶湖およびその流域河川において薬剤耐性大腸菌の存在実態を調査した.降雨時の出水が河川中の大腸菌数および薬剤耐性大腸菌数の増加に影響を及ぼすことが示唆されたため,野洲川の流量測定点において出水時に連続的な大腸菌数の詳細な時間変動を調査した.その結果,河川増水時に大腸菌や薬剤耐性大腸菌の菌数が大幅に上昇することが明らかとなった.さらに,下水処理場や河川,琵琶湖より単離したテトラサイクリン耐性大腸菌のゲノム解析を通じて,その起源を推定した.さらに,流域河川の調査結果から,河川中の薬剤耐性大腸菌数と流域の土地利用との関係を調べ,汚染要因を推定した.これらの結果から,琵琶湖水系における薬剤耐性菌の存在実態が流域における人為活動の影響を受けている可能性,および琵琶湖水系における大腸菌および薬剤耐性大腸菌の負荷はヒトだけでなく家畜の寄与も大きいことが示唆された.