2022 年 78 巻 7 号 p. III_349-III_358
道路塵埃は,海洋へ流出するマイクロプラスチック(MPs)の主要発生源の一つであるとされ,タイヤを発生源とするゴム片が確認されており,生態系への悪影響が懸念されている.しかし,タイヤは様々な物質の混合物であるほか,カーボンブラックによりスペクトルの吸収残渣の増大が生じることで,付属のライブラリに基づくATR-FTIRでの材質同定に限界があった.そこで本研究では,複数メーカーのタイヤから採取した小片のスペクトルを標準スペクトルとしてライブラリに登録することにより,MPs分析対象サンプルがタイヤか否かを判断する手法について検討を行った.用途や採取部位の違いによりタイヤ小片のスペクトル形状は異なる傾向を呈した.市街地の道路塵埃及び路面排水施設内堆積物の試料中における黒色MPsの材質分析においてタイヤライブラリも参照した結果,タイヤライブラリはタイヤ小片の検出やその材質同定方法の改善に有用であるものと考えられた.