2022 年 78 巻 7 号 p. III_369-III_379
内湾底層の溶存酸素消費につながる粒状有機物の沈降過程での化学組成や分解活性の変化を明らかにするため,宮城県志津川湾において異なる水深帯から沈降性と浮遊性の粒状有機物を採取した.沈降物の長鎖多価不飽和脂肪酸(C≧20PUFA)含有量は比較的高く,C≧20PUFAを相対的に多く含む有機物が沈降していることがわかった.また,沈降物中のC≧20PUFA含有量は水深方向に減少し,沈降過程で易分解性の粒状有機物が分解によって減少していると考えられた.沈降物のC≧20PUFA含有量と酸素消費速度との正の関係から,水深方向への分解に伴う粒状有機物の酸素消費活性の低下が示された.以上より脂肪酸組成は,内湾の比較的浅い海域であっても沈降過程における易分解性の粒状有機物の組成や分解性の変化を高い感度で捉えられる有用な指標になると考えられる.