2022 年 78 巻 7 号 p. III_43-III_52
本研究では,下水からの窒素資源回収を飛躍的に高効率化・省エネルギー化することを目的として,栄養塩欠乏下における微細藻類の細胞内有機物蓄積特性を応用した新しい高効率窒素回収手法の基礎理論を提案するとともに,その有効性を実験室規模での実験により検証した.リン欠乏環境への曝露及び pH制御により,Chlorella sp. MK201株の細胞増殖を人工的に抑制し,細胞内有機物の蓄積量を一時的に増大させることで,蓄積された有機物をエネルギー源とした増殖速度の向上が可能であることが確認された.細胞内有機物の蓄積とその利用からなる二段階の工程により微細藻類の高効率培養を実現する新しいアプローチの有効性が確認されたことは,今後の藻類利用の可能性を広げることに貢献するものと考えられる.