2008 年 64 巻 4 号 p. 413-430
大規模地下空洞の維持管理には施設全体の総合的評価が必要とされる.本研究では,空洞周辺岩盤の健全性を評価する際に検討する項目として,PSアンカーの軸力に着目した.導入力を固定するためにナットが用いられている場合,磁歪法を用いてその表面に存在する応力を計測し,間接的にアンカー軸力を推定することができる.まず,室内試験によりナットの残留応力を計測し,それが十分に小さいことを確かめた.次に,軸力を作用させた状態でのナット表面の応力を計測し,両者の関係を調べた.この関係を用いて,実際の地下発電所空洞で計測したPSアンカーナットの応力からその軸力を推定し,それを検証した.その結果,磁歪法から推定した軸力は十分な精度を有していることが分かり,今後の大規模地下空洞の健全性評価を合理化できる可能性を確認できた.