2020 年 76 巻 3 号 p. 266-276
北海道苫小牧市で実施された二酸化炭素回収貯留の大規模実証試験では,海洋潮汐による圧力変動成分の振幅減少および海洋潮汐に対する時間遅れが報告された.この現象はCO2の流入による間隙流体の圧縮率の増加に起因し,海洋潮汐による変動荷重に対する力のつり合いと間隙流体の流れによって理論的に説明できる.よって海洋潮汐による間隙流体圧変動から貯留層中のCO2挙動を推定できる可能性がある.本研究では二相流存在下における多孔質弾性論に基づく流体-地盤力学連成解析プログラム(SWN3D)によるシミュレーションにより,CO2圧入に伴い振幅減少と時間遅れが生じることを確認できた.振幅と時間遅れは貯留層内のCO2挙動に連動して変化しており,圧力変動の分析により貯留層内におけるCO2挙動をモニタリングできる可能性が示された.