2020 年 76 巻 3 号 p. 285-294
大深度地下岩盤に掘削される空洞の安定性を検討するには,岩盤の変形係数や初期応力を評価することが必要となる.国内では原位置岩盤の初期応力測定には,主に水圧破砕法や応力解放法等が用いられてきた.しかし,これらの測定法は特殊な作業を伴うためコストや労力を要する.
一方,岩盤の変形係数を測定する有効な方法にボアホールジャッキ試験があり,岩盤の変形係数は載荷圧力-孔壁変位曲線の直線部分の傾きから算定される.本研究では岩盤の初期応力が同じ曲線の切片から求められることを理論的に明らかにした.同一試験から変形係数と初期応力が求められれば,従来の測定法に対して効率化や低コスト化が図られる.本論文では同試験から初期応力を求める弾性理論及び大型コンクリート試験体を用いた室内実験によりその妥当性を確認した結果を示す.