抄録
一般的に公開されている消防庁などの統計を利用して,日本の自然災害による死者・行方不明者などの経年傾向を検討した.1949~2014年の自然災害全体の死者・行方不明者数,1968~2014年の風水害による死者・行方不明者数は,いずれも統計的に有意な減少傾向が見られる.1970年代以降は増減傾向が不明瞭だが,10年移動平均値は小さくなっている.全壊,半壊,床上浸水家屋数についても傾向は同様である.「近年災害(被害)が激増している」という認識は適切でない.同じ期間における「不慮の事故」(火災,交通事故,山岳遭難,水難)による死者数の変化傾向は一様でなかった.時代の進歩に伴うハード面,ソフト面の対策の充実とともに,死者等が単純に減少していくものではないことが示唆される.