抄録
洪水・高潮・斜面崩壊複合災害の潜在被害額分布を定量的に評価した.複合災害の外力としての日降水量と潮位偏差は過去の年最小気圧との負の相関関係から統計的に算出された.その日降水量と潮位偏差を用いて現在気候下における洪水・高潮浸水被害額と斜面崩壊被害額を算出し,両者の和を複合災害被害額とした.次に,複数のGCM出力の気圧値を用いて将来変動を予測し,将来の複合災害潜在被害額も推定した.結果として,現在における再現期間50年の複合災害の潜在被害額は107兆円と推定された.将来推定の結果,現在に比べ潜在被害額が減少する気候シナリオの組み合わせも存在するものの,平均的な複合災害潜在被害額は2050年期にかけて1.07倍,2100年期にかけて1.08倍に増加する事が示された.