2017 年 73 巻 4 号 p. I_133-I_138
近年我が国では豪雨災害が頻発しており,温暖化の影響が指摘されている.特に都市域ではゲリラ豪雨による鉄砲水などの被害が報告されるが,温暖化に伴うその生起頻度の変化は明らかでない.
本研究では,5km解像度領域気候モデル(RCM5)の出力を用いて,近畿地方周辺で8月に生起するゲリラ豪雨の生起頻度の将来変化の推定を試みた.まずXRAINによるレーダ降雨情報の平滑化により,RCM5の解像度(5kmメッシュ・30分ごと)で滑らかに表現されるゲリラ豪雨の降雨分布を確認した.RCM5出力の解析では,「晴天日」と「降水システム日」を客観的に分類し除外したうえで,残りの日の降雨分布から,ゲリラ豪雨に対応する降水セルを目視で抽出した.基準を満たす降水セルが抽出される「ゲリラ豪雨発生日」の日数の将来変化を調べた結果,8月で,特にその下旬において有意な増加がみられた.8月下旬における増加には,「降水システム日」の減少が寄与している可能性が示唆された.