抄録
本研究では洪水流と氾濫流を一体的に解析する数値解析モデルを開発し,埼玉県川島町に適用した.町内の氾濫特性が大きく異なる2つ(市野川氾濫ケース(Case A)と都幾川氾濫ケース(Case B))の出水に適用し,町内に設定した一次避難所への氾濫流の到達時間を把握した.
氾濫特性をもとにコミュニティバスを活用した最適避難経路を把握した.その結果,Case Aでは,氾濫開始前に町内の西部に位置する一次避難所を巡回し,氾濫開始後に東部の一次避難所を巡回する経路が総避難時間を最小化した.一方,Case Bでは,氾濫開始前に北部に位置する一次避難所を,氾濫開始後に南部を巡回する経路が総避難時間を最小化した.この結果は,越流地点やその後の氾濫形態の相違に応じて,どの地域を優先的・重点的に運行すべきかを事前に判断できる可能性を示唆している.