抄録
わが国の流域の社会・経済環境の変化, インフラストックの活用と生産性増大への要請は,治水事業の進め方の変化と具体的対応を求めている.河川の維持管理が重要な時代になり,これまでの治水施設のストック効果を高めるためにも,また地球温暖化に対する適応策の効果的な実行のためにも,河川堤防やダム等の治水施設により流域の洪水流量をコントロールし,流域の適切な流量配分を行えるように洪水流の水位と流量の新しい関係の構築が求められている.
本文では,洪水観測水面形を用いた解析法の必要性を示し,この解析法が河川堤防,ダム等治水施設による洪水流量の適切なコントロール,バランスの見積もりを可能にすること,広域的・総合的な視点から河川管理につながることを示した.次に,この解析法を平成27年9月の鬼怒川洪水流に適用し,洪水水理現象を広域的,総合的に把握し,流域全体の治水施設による水量分担を見積もることにより,洪水水面形が河川管理と洪水水理現象の見える化に重要な役割りを果たすことを示している.