抄録
ダムの持続的管理における課題の一つに堆砂対策がある.堆砂対策の中で出水時の水位低下を伴う通砂運用は,洪水の際に土砂を下流に通過させるため環境適合型である.その土砂通過特性はダムの堆砂特性,出水時の洪水吐敷高およびダム直上流河床高に対する水深の比(クレスト/河床水深比)などのパラメータが支配的と考えるが,系統的に検討されたものはほとんどない.本論文では,発電用ダムの通砂特性について,クレスト/河床水深比に着目し,出水時の水位低下と貯水池の土砂捕捉率の関係を既往検討から推定し,複数ダムを例に河床変動解析により通砂運用効果を検証した.更に,通砂運用に伴う土砂掘削量の低減による便益や減電コストを用いて総合的な経済性を検証し,今後,発電用ダムに通砂運用を幅広く導入していく可能性と課題を明らかにした.