2018 年 74 巻 4 号 p. I_115-I_120
将来の河川流量の変化がダム貯水池の利水運用に及ぼす影響について検討を行った.気象研究所MRI-AGCM3.2Sの現在気候実験及び21世紀末気候実験の気候推計データを入力値として,分布型流出モデルHydro-BEAMにより,現在気候および将来気候における吉野川流域と最上川流域の河川流量を推定した.この際,ダム群の操作や大規模取水をモデル化して考慮し,人為的な流況調整を加味した形で河川流量を推定し,流況の変化がダム利水操作に与える影響の基礎的な分析を行った.その結果,将来気候下では夏季以降のダム貯水量が低下する傾向が示された.また最上川流域白川ダムでは,融雪時期の早期化の影響により,初夏に貯水量が減少する可能性が増える傾向が見られた.ただし,夏期の水位制限の存在により,多くの年では融雪時期の早期化の影響は限定的である可能性が示唆された.