抄録
本研究では,アオコ状態となった尾原ダムにおいて,昼夜36時間の連続した集中観測を2回(2016年8,9月)実施し,ダム湖における,水温,クロロフィルa(Chl-α)および栄養塩の時空間分布を調査した.その結果,水温躍層の形成位置が大きく異なる両方の調査において,藍藻類が原因と考えられた日周的な鉛直運動にともなうChl-αの変動が同様に観測された.水面~水深1mの範囲におけるChl-αは日間で8~60 μg/Lの範囲で大きく変動し,鉛直的な移動は水面から水深5mに達した.水面から水深2mの範囲では栄養塩(N, P)が欠乏状態にあったものの,調査日前後のデータから,低リン濃度環境において耐性を有するMicrocystis ichthoblabeがアオコ状態を形成していたと考えられた.また,栄養塩との関係から藍藻類はダム湖の流入部おいて増殖したものが堤体側に移流してきたと考えられた.