抄録
雨季の短期・中期的な氷河融解量推定の精度向上に資するため,C-band SARを用いて2015年から2016年の熱帯氷河の後方散乱特性の解析および雪線高度の推定を行った.HuaynaPotosi West氷河を対象として,空間平均の後方散乱係数は,雨季の前半期間(11月~1月)に減少し,後半期間(2月~4月)に増加,乾季の期間は減少する傾向を示した.次に,氷河の縦断線上の後方散乱係数を抽出し,4パターンの階級値(階級幅4, 2, 1, 0.5dB)のヒストグラムを作成し,後方散乱係数の累積相対度数(0.5以上)を用いて乾季および雨季の平均的な雪線を決定する閾値を決定した.累積相対度数の階級幅を1dBおよび0.5dBとして,雨季と乾季の両時期の雪線高度を推定した.以上よりSentinel-1A, B C-band SARから得られる後方散乱係数が熱帯氷河における雪線高度の抽出に有効であることを示した.