2018 年 74 巻 5 号 p. I_307-I_312
土地の大部分が乾燥気候である中央アジアでは,水利用を上流部の山岳からの氷河融解水に依存して生活している.いつ, どれだけの水が利用可能かを知るには,年間の水・熱収支の把握だけでなく,その季節性の再現が必要である.既存の陸面過程モデルSiBUCでは氷河融解のピークが実測より数ヶ月早期評価される等,雪氷の融解時期の正確性において改善の余地がある.本研究はSiBUCへの入力データのひとつである気温の算出方法に注目し,気温が雪氷の融解に及ぼす影響を分析することを目的としている.解析は陸面過程モデルSiBUCを用いて行い, 入力データは再解析データJRA55とキルギスの氷河観測地点の観測データを使用した.その結果,気温と短波放射・長波放射が雪氷の融解に大きく関わるほか,特に短波放射はJRA55と実測データ間で乖離が大きいことが明らかになった.