2018 年 74 巻 5 号 p. I_49-I_54
気候復元により長期間にわたって気候変動の解析が可能になる.将来の気候予測のためにも過去の気候変動を捉えることは重要である.本研究ではOkazaki and Yoshimura (2017)の手法に基づき,アイスコア,サンゴ殻,樹木年輪セルロースの酸素同位体比データを用い,データ同化により過去千年の気候場を算出した.プロキシの同位体比の同化により他の気候要素が拘束されることを確認した.気候場の年々変動の再現にはプロキシデータの数量による影響がある.ただ,プロキシデータ量が多い程,解析値に与える影響が大きいわけではなく,用いるプロキシデータが全体の約20%程度でも全てのプロキシデータを用いた場合と同様に地上気温などの年々変動を再現できる可能性が示唆された.ただ,プロキシによる解析値への影響は時空間的に異なる.特に,中部太平洋熱帯域のサンゴ殻による影響が大きいことが分かった.