2018 年 74 巻 5 号 p. I_43-I_48
第6次結合モデル相互比較プロジェクトCMIP6の陸域過程に着目した新しいプロジェクトとして,LS3MIP(The Land Surface, Snow and Soil moisuture Model Intercomparison Project)があり,2018年5月の時点で各陸域モデルグループがモデル実験の準備を行っている.本研究では,LS3MIPの概要およびLS3MIPの必須実験の一つである20世紀陸域シミュレーションの実験設定について説明する.加えて,20世紀陸域シミュレーションのテスト実験を陸面過程モデルMATSIROを用いて行い,その初期解析結果からみられるMATSIROが計算する流出量,積雪被覆率,土壌水分,蒸発散量の20世紀の変化傾向とその要因について報告する.トレンド解析の結果,北半球の大半の地域で水収支は増加傾向にあったが,ヒマラヤ山脈の周辺では減少傾向にあり,これは同地域で特徴的な降水量の減少傾向によるものと考えられた.