2019 年 75 巻 1 号 p. 172-183
2018年7月に発生した西日本豪雨は岡山県内で甚大な被害をもたらした.本論文では統計解析,現地調査および数値シミュレーションを用いて,2018年7月豪雨時の岡山県全域での降雨特性,および旭川水系で生じた河川被害や旭川下流部での洪水流の特性を検討した.その結果,継続時間が24時間以上の降雨を対象にすると今次豪雨の規模は50年確率以上であることが分かった.また,本豪雨により旭川の県管理区間や砂川においては,越水や浸透崩壊により堤防が決壊したため,多数の住家が浸水した.さらに,今次豪雨と同規模の旭川下流部での既往洪水と比較した結果,豪雨直前に旭川 12kの分流部の改修が概ね完成していたことで,多くの水量が放水路である百間川へ分流したため,旭川下流の岡山市街地での浸水被害を未然に防いだ可能性が高いことが分かった.