2019 年 75 巻 1 号 p. 184-190
平成30年7月豪雨では,西日本を中心に甚大な被害が発生し,高知県幡多郡大月町でも土砂災害による人的被害が生じた.同町の土砂災害には,0次谷で発生した土石流が含まれ,表層崩壊よりも流動性が高い土砂が,平坦地まで流出した.0次谷は定義上急傾斜地に含まれ,落石や崩壊としての対応が主流で,土石流的な土砂流出対策は行われていない.本研究では,実際の被災地を対象に地形と現地調査結果を分析することで,土砂層厚が2m以上,谷の延長が100m以上,渓床勾配が30°以下,上部に明瞭な集水地形を有することが,土砂を流出させる0次谷の条件となることを提案した.また,谷間口(a)に対する奥行き(b)の比が0.22を超える0次谷で土砂が流出していることから,b/a比が土石流を発生させる0次谷の抽出条件の一つになる可能性があることが分かった.