2019 年 75 巻 1 号 p. 362-369
広島県安芸郡熊野町川角で発生した土石流について,現地調査と数値シミュレーションを実施し,宅地における土石流の氾濫特性と土砂災害警戒区域との関係を検討した.現地調査により,斜面の三カ所から土石流が発生し,合流・分派した渓流を土石流が流下し,北側の渓流から宅地に流れ込んだ土石流によって多くの被害が発生したことが明らかとなった.数値シミュレーションにより,山頂付近の崩壊発生から北側の渓流の出口付近の家屋に土石流が到達するまでわずか40秒程度であった.土砂災害警戒区域内には土砂が流れてこない領域も多いことと豪雨中に避難のために長い距離の移動が困難であることを考えると,土砂災害警戒区域内の土石流が流れてこない領域への避難は,生存確率を上昇させることが期待されることが示された.