2019 年 75 巻 1 号 p. 403-413
平成30年7月豪雨では西日本各地で土砂災害が多発し,山裾まで開発が進んだ扇状地の住宅地で発生した土石流により人的・物的被害が生じた.山間部では,谷出口から延びる渓流や流路が扇状地の直上で暗渠化されることが多い.平成30年7月豪雨により兵庫県神戸市や広島県広島市の住宅地で発生した土石流では,暗渠が土砂等で閉塞したことで,暗渠が接続した道路上を土砂・水が移動して,住宅地に広く被害を及ぼした.住宅地の道路勾配が急だったことや,花崗岩地域に見られる細粒土砂を多く含む土石流が高い流動性を示したため,土砂移動範囲が住宅地内で拡大した場所もある.本研究では,扇状地の暗渠や道路に着目して災害状況を整理するとともに,数値解析による検討,ならびに住宅地の安全な土地利用などの防災対策の検討手法を示すことを目的とした.