2019 年 75 巻 1 号 p. 414-428
西日本豪雨災害では,豪雨と土石流により,地域のインフラが深刻な被害を受けた.特に広島県では,発災前に豪雨の危険性が指摘されていたにもかかわらず,住民避難率の低さが指摘されている.本研究では地方紙が報じた避難関連報道に基づいて,広島県内での同災害への受け止めや対応の特徴を明らかにする.本災害では,住民側の正常化の偏見に加えて,住民と行政が事態の進展の速さについていけないことが,避難の判断や対応が遅れる原因と思われる.また新聞報道とボランティア活動の空間分布の相関は強い一方で,避難者数とボランティア活動の相関は小さく,ボランティア配分の必要性が示唆された.今後は,避難遅れを想定した情報インフラやボランティアの効率的配置のための情報集約が必要である.