2020 年 76 巻 1 号 p. 1-9
佐渡島の植生が異なる隣接した林地・草地流域で,降水量と流出量の観測,渓流水採取と水質分析を行い,二流域の流出・水質特性を明らかにした.流出特性として,林地の降雨に対する応答性は,草地に比べて緩やかであり,ピーク時の流出量も低く,降雨後の流出量逓減もより緩慢であった.流出量と主要溶存イオン濃度の関係は,両流域でCa2+やMg2+,Na+,HCO3-濃度に加え,EC(電気伝導度)が流出量の増加に伴い,減少する傾向が確認された.水質成分の流出量増加に伴う濃度減少の大きさは,草地に比較し,林地で明らかに小さかった.このことは,草地よりも林地で,降水成分は時間をかけて流出することと整合的であり,林地では,降雨時に基底流出水中に多く含まれるCa2+やMg2+などの水質成分が,草地に比べて希釈効果を受けにくいことが推察された.