2020 年 76 巻 1 号 p. 129-139
降水量の定量的な予測は,治水,利水の観点から重要である.本研究では,ディープラーニングアーキテクチャの一つであるLSTM(Long short-term memory)を用いモデルを構築し,九州地方のAMeDAS観測点114点のデータを学習させ,各点の1時間後の降水量予測を行った.本モデルは,多くの点において,3つの精度指標(二乗平均平方根誤差,スレットスコア,降水の立ち上がり捕捉率)で,持続予報や気象庁MesoScale Modelを上回るか同程度の精度であった.この予測精度は明確な空間偏差があり,風上側に観測点が存在しない北西・西・南西の海岸付近で内陸部や東側よりも精度が低下した.また,学習に重要な気象因子が降水量のみだったことから,降水の移流パターンを学習し予測していることが示唆された.