2020 年 76 巻 1 号 p. 264-273
令和元年台風19号により甚大な被害が生じた岩手県沿岸域における発災メカニズムを考察した.岩手県沿岸域における今次災害は主に短時間豪雨による土石流や内水氾濫であった.1976-2005年および1989-2018年の各30ヶ年を統計期間として,それぞれ推定された年最大1時間降水量の10年確率降水量は,対象5地点にて1989-2018年の方が8-24%大きくなった.1976-2005年の10年確率降水量と今次災害の最大3時間降水量の差は,普代村・宮古市・岩泉町小本地区にて50mmを上回り,短時間豪雨により大規模な内水氾濫が発生する状況であったことが確認された.一方,釜石市では大きな溢水量は推定されず,土石流による下水道の堰止まりや津波堤防が被害拡大の一因であることが確認された.