2020 年 76 巻 1 号 p. 53-69
水災害に対し世界で最も脆弱な国土を有しているバングラデシュと周辺のベンガル地域において,降水量,河川水位の時系列変化傾向と,エルニーニョおよびインド洋ダイポールに関する指数SOI,DMIとの相関・因果関係について,統計学的解析手法を使って分析した.1985~2016の32年間の月降水量は,バングラデシュの中部~北部地域で減少傾向で,特に中部で有意であること,南部~南東部で変化無し,または上昇傾向であることがわかった.32年間の月降水量の変化の傾きは,116年間のそれよりも大きいこと,さらに,Cross-Waveletコヒーレンス,VAR-LiNGAMの解析結果から,降水量はSOIよりもDMIとの相関が強いこと,また,DMI,SOIから降水量に対して因果関係も存在していることが明らかになった.