2020 年 76 巻 2 号 p. I_1-I_6
線状対流系事例である 2012年亀岡豪雨に対して,1000mと500m解像度で擬似温暖化実験を行った.空間解像度の違いによる線状対流系表現の違いと将来変化を解析し,その将来変化メカニズムをマルチスケールから解析した.結果,500m解像度で現在・擬似温暖化実験ともに線状対流系が非常に良く表現され,さらに擬似温暖化実験では降雨強度及び総雨量の増加が見られた.その要因として,将来気候では積乱雲内の凝結量が増加し,また積乱雲が発生しやすい対流不安定な場が実現されること(メソγ∼β),複数の積乱雲群による線状対流系構造そのものが強化されること(メソβ),南方から対流不安定な大気が継続して供給されること(メソα)が明らかになった.また,1000m解像度はメソαの将来変化は捉えられる一方で,メソβ以下の変化は十分に捉えられないことを示した.