2020 年 76 巻 2 号 p. I_367-I_372
気象・気候分野で進められている大アンサンブル予測データの有効利用を目的に,降雨流出氾濫モデルのエミュレータを開発した.このエミュレータは,降雨の空間・時間分布から,降水イベントの最大浸水深を予測する.まず3種の正則化回帰学習器を作成し,Random Forestによるそれらのアンサンブル学習を行った.この構成は,劣決定問題における過学習回避と,弱学習器を複数とりまとめるスタッキングによる非線形変換という2つの役割を果たしている.最大浸水深の予測精度には,回帰学習器の正則化手法による違いは殆ど見られず,回帰学習器は深い最大浸水深を過小評価する傾向が見られた.複数の回帰学習器のスタッキングにより,学習器の予測精度が大幅に改善した.特に,回帰学習器に見られた最大浸水深の過小評価が大きく改善した.